GRAFFITI AREA OF NO RULE 落書き無法地帯

【新コラム】叶井俊太郎の映画「熱狂宣言」カード撒き奮闘記  vol.0 「アメリ」を日本でヒットさせた伝説の宣伝マン!50歳でまさかのクビ!?逆境の中、トンデモないミッションが!!

50歳にして解雇になってしまった!

僕が所属してる(株)レスペという映画配給会社が映画事業から縮小&撤退することになり、同時に僕は解雇になってしまった!

そこであちこちの映画配給会社、宣伝会社の社長たちに会ったり電話したりして「クビになったので採用してくれ!」とお願いしてるが、どこもダメ!理由は50歳でギャラが高いし、会社の若者が嫌がるとのこと。。

ま、確かにそうかもな。

マジで今後どうしようかと煮詰まっていた時、ふと奥山和由さんのことを思い出し

「ご無沙汰です!奥山さん、ぼくを雇ってもらえませか?」

とぶしつけでメールしてみると、「明日、時間ある?」と返事が!これはもしかして何かいい話しがあるかも?と期待した!

試写で受けた衝撃

翌日、吉本興業で奥山さんに会うと、「DDホールディングスの松村社長のドキュメンタリー映画「熱狂宣言」という作品作ったから、これを手伝ってよ」と、突然言われる。
なるほど。話しというのはこのことでしたか。

そしてイマジカ試写室で作品を見た。

松村社長、凄過ぎた。衝撃を受けた。。

奥山さんとの仕事は「TOKYO JOE」以来ほぼ10年ぶりだし、相変わらずの無茶ぶりが面白いので宣伝の仕事をご一緒させていただくことになったわけです。

しかもこの映画の宣伝コピーは「すべての逆境には意味がある!」というじゃないですか!

これはまさにいまの自分の置かれてる状況ですよ!
さらに、松村社長も同年代だし、これはこの映画に関わる運命だったのか?

今までやったことがない宣伝!?

そんなわけで、自分が映画「熱狂宣言」でできる仕事は何か?というテーマでプロデューサーの江角さん・奥山さんと打ち合わせする。そもそもこの「熱狂宣言」の宣伝はいままで誰もやったことがない宣伝をする!ということを売りにしたいと。通常の情報解禁のリリース作りもなし!
なので、初号試写を見た人たちが次々とSNSに書き込みまくってる。うーむ。。
確かに普通ではない宣伝の立ち上げだ。他にも規格外のことが盛りだくさんあるが、それはまた追って。

打ち合わせは2時間以上になり、この日は結論が出なかった。

ひとまず江角プロデューサーに「現状、この映画がどんな状況なのか」を教えてもらうため、翌日に江角さんと二人で打ち合わせすることになる。1時間くらいの予定でいたが、結局3時間近くも打ち合わせしてて驚愕する。。何故に3時間も?と思われるますよね。ぶっちゃけあまり覚えてないんです。。とにかくね、江角さんハンパなく熱い!まさに一人「熱狂宣言」ですよ!

「叶井くん、映画の宣伝の基本はチラシ撒きだよ。公開までに15万枚配ってくれたまえ!」

さらに翌日また江角さんと打ち合わせ。会議室に行くとデスクの上に大量の「熱狂宣言」名刺カードが!

「こ、これは?」と聞くと

「叶井さん、奥山さんのツイッター見ました?」

と聞かれる。

「いや、見てませんけど?僕はツイッターやってないんです。」

「これです」

と奥山さんのツイッターを見せられる。

そこには

「叶井くん、映画の宣伝の基本はチラシ撒きだよ。「熱狂宣言」の宣伝名刺カードを1日1000枚、一ヶ月で3万枚、公開までに15万枚配ってくれたまえ!」

奥山さんからトンデモない命令というか無茶ぶりが!

映画の宣伝の仕事をしてもう30年近くなりますが、チラシやら配布物を配ったことはありません!
あるとしたら映画の試写会でお客さんに配るくらいか。
ランダムに一般の人たちに名刺サイズのチラシを配るって。。

これって意味ある?

もらっても絶対に捨てると思う。配るとしたら、例えばステッカーとか、割引券とか、ティッシュとかなにかしらもらってお得な感じがするモノであれば配る意味ももらう意味もあるんだろうけど、ただの名刺サイズのカードを配ってもらってくれるのか??

奥山さん曰く、

「意味のないことをやり続ければ、意味があることになる!」

とおっしゃる。とにかく配り続けろ、と。

さらには

「お前が道ばたで配ってて警察に捕まるとかさ、なんでもいいから話題になることやってみて!」とまでおっしゃるではないか。。逮捕ですか。。ますますハードルが高くなってきているような気がしないでもない!

もろもろ疑問に思いつつ、江角さんが用意した名刺カード1000枚をひとまずもらって帰宅。

6月某日

早速、妻で漫画家の倉田真由美に「これ配ることになった。もらっといて」と宣伝名刺カードを渡す。

「へー、いつ公開?」

「11月頃」

「は?いま6月だけど?今もらってもいらないでしょ!公開直前に配りなよ!」

ま、確かにそうだよな。。

6月某日

小学3年の娘とその友達を連れて、自由が丘のゲームセンターに行く。
子供たちはUFOキャッチャーが好きなんです。
そこでお店のスタッフさんやお客さんに試しに50枚ほど名刺カードを配る。
皆さん受け取ってくれるではないか!よかったよかった!だが、この作品の客層なのか?

6月某日

最近、仕事で知り合ったデザイナー兼アーティストの30代女性と銀座でランチ。この女性にも名刺カードを渡す。「あ!この人知ってる!へー、ドキュメンタリー映画になるんだ」とかなり興味持ってくれた!

でも1日1000枚のノルマだから、1枚だけでは奥山さん怒るかもな。。

《叶井俊太郎プロフィール》
「アメリ」の大ヒットで知られる宣伝マン。本人曰く勘違いして買い付けた『アメリ』(2001年公開)が興行収入16億円の大ヒット。一躍映画業界注目の人物となる。その後、ファントム・フィルム、トルネード・フィルム等の会社を設立。『えびボクサー』『日本以外全部沈没』等の傑作映画を果敢に製作する他、高倉健ドキュメンタリー映画『健さん』『二郎は鮨の夢を見る』などのPRも手がけた。コラムニストとしても活躍。妻は『だめんずうぉ~か~』の漫画家・倉田真由美。